一度ステージに上がるとなかなか降りられない

その昔、私はずっと人前でしゃべるのが苦手だった。あがり症で、息を吸うばかりで吐けないので声が上ずる。

20代とか30代でいろんなことが上手くいかないとき、ずっと「人生のステージを上がればそこには同士がおり、いろんなことが楽になるのではないか」と思っていたし、「人生のステージを上がるということは、つまり、より多くの人の前に出ることだ」と信じていた頃があった。信じていたので、そのことに対する努力を厭わなかったから、スピーチを習いに行きそれなりに人前が苦手であることを克服していく過程も楽しかった。

しかし、最近になるともう、自分の成長というのはいつまでも続かないということが分かる(そういうことについては『人生後半の戦略書』という本に詳しく書いてある)。そうなると人前に出るのも億劫になってきた。人前に出る機会が減ると人前でしゃべることへの緊張感が復活してきたので、「本気でこういうことから降りたいなあ」と思うようになった。

しかしこれがなかなかうまくいかない。「もう降りたい」と周囲に言うと、「またまたまた~」と胡麻化されたり、「そういわずもっと頑張ってください」と励まされたりする。

先日も、某団体のOB会長として挨拶をしなければならなかった。が、そもそもOB会長という役も降りたいのだ。しかし、なかなか周囲が許してくれない。

最近はよく思う。ステージに上がるのは名誉なこと、ではなくお調子者が周囲から担ぎ上げられた結果なのではと。

でもまあ、たまにあるでしょう。さっと潔く、すべての表舞台から身を退くことができる人が。そういうのを目指したいなとは思ってます。