二人目が現れること

前にも書いたかもしれませんが、私がかつて経営の悩みをひとつ乗り越えられたのはリーダーシップではなく「フォロワーシップ」の大切さを教わったからでした。

有名なTEDトーク、デレク・シヴァーズの「社会運動はどうやって起こすか」では、このことがとても上手に語られています。10年以上も前の動画ですが、何度見ても新しい気づきがあります。

この中で印象的な言葉があります。

「最初のフォロワーというのは過小評価されていますが、実はリーダーシップの一形態なのです。」

誰かが一人で踊り出したとき、「何あれ?」と周囲は冷ややかに見ているものです。でも、その行動に最初に加わる「第二の人」が現れた瞬間、それはムーブメントになるのです。

私が会社の代表になったとき、よくあるように「一人で闘っている感じ」がありました。でも今では、「社長って孤独でしょう?」と尋ねられたらこんな風に答えます。

「そんなことないよ!仲間を作ることができるし、仲間が仲間を作っていく様子にもしょっちゅう出会えるよ!」

この感覚の転換は、自分が何かを必死にやっているときに誰か一人が「僕も、私も、やりたい」と名乗り出てくれる瞬間に起こります。コミュニティを運営した経験がある人なら、そういう「ひとりじゃなくなる瞬間」がふいに訪れることを知っていると思います。

たとえばずいぶんと昔、私が社内で筆記試験の仕組みを考えていたとき、「自分も一緒に作ってみたい」と言ってくれた社員がいました(今の某役員です)。その言葉がきっかけで、社内採用における筆記試験の仕組みが形になりました。

最近では、私がライフワークのように扱ってきた Raspberry Pi(ラズパイというマイコン基盤)で新人研修をしていたら、総務のスタッフがふとこう言ってくれたのです。

「私も自分でラズパイを買おうかどうか迷ってるんですよね。」

それをきっかけに、なんと社内に「ラズパイ女子部」が誕生しました。リーダーシップとは「先頭に立つこと」だと思われがちですが、最初のフォロワーがいて初めてリーダーはリーダーになれると思います。

私は仲間に恵まれています。そしてその仲間たちがまた仲間を巻き込み、想像もしなかった広がりが生まれています。これからもそんなフォロワーシップに支えられながら、社長としてできることを模索し続けたいと思います。