「絶対間違う」と確信する

我が家の庭のシンボルツリーは、落葉樹で冬はとにかく葉が庭中に落ちてかき集めるのが大変なのだが、夏はこんな風に薄く、黄色に近い薄い葉がひらひらとして爽やかな気持ちになる。今の家を建てる時に、わざわざ園芸の本など買って調べて、園芸業者さんに頼んで運んで来てもらった木ではある。だが、寒くなり落ち葉が大量に落ちるときなどは「こんなに大量の落ち葉を掃除し続ける人生なんて無理だ。もう木を抜いてしまうしかない」という風に追い詰められもする。

そんな絶望に見舞われることもあるが、今は先日剪定してもらった木から薄いヒラヒラとした新芽がたくさん出てきて、とても綺麗だ。

何匹もの蝉がとまっている時もあり、これはかなりうるさい。

土曜に、置き薬の営業の人が来ていて、夫が玄関口で対応していた。そばの部屋にいた私には夫と置き薬の人の会話の声が聞こえてくる。置き薬の人は「庭の木の葉が黄色くて、珍しいですね。なんという木ですか?」と夫に訊いている。私は咄嗟に「夫は絶対に木の名前を言えないだろう」と思ったが、意外にも夫はハキハキと「『アメリカン・ハート』です」と答えた。「へえ。それは初めて聞きました。とても綺麗な木ですね」と、置き薬の営業の人が褒めちぎっている声も聞こえてくる。

しばらくして夫が意気揚々と置き薬の対応を終えて部屋に戻ってきた。

私は夫に言った。「惜しい。惜しいよ!あの木は『アメリカン・ハート』じゃないんだよ」と。

夫は、「え?本当はなんていう名前?」と訊くから、私は教えてあげた。

『ハート・オブ・ゴールド』っていう木だよと。

この木の名前も込みで私はこの木を気に入ったから取り寄せたんだもの。間違えられちゃあ困るなあ。でもそこで絶対に期待を裏切らないのが夫なのだ。

それにしてもこの木が葉を落とす季節になったら私はまた「木を抜いてしまおうかな」と思うぐらいに心が折れてしまうから、この夏の暑さの中で涼しく揺れる黄色の木の葉をもっともってみんな褒めて褒めて褒めちぎって欲しいものだ。