「死」について紙の本で読む

未だに結論が出ない。 電子書籍にすべきか。紙の本にすべきか。 電子書籍は入手し易いし、家の中に本が溜まらないので良い。だが、どちらかといえば紙の本に気持ちは傾いている。「あのページに書かれたあの文章」に立ち戻りたいときに早く物理の位置にアクセスできる。電子書籍で買っても気に入ったら紙の本を買い直したりもする。

多くの日本人はもう決めたのだろうか。電書か。紙か。

今は久しぶりに図書館を利用している。

最近読んだ本。

この中ではスタッズ・ターケルの「死について」をお勧めとして挙げておきたい。表紙の装丁も良い。「あらゆる年齢・職業の人たち63人が堰を切ったように語った」というキャッチコピーも良い。中身はカジュアルなしゃべり口調で訳してあるし、一人ひとりのインタビューはそんなに長くないので拾い読みにも適している。職業は医師もいれば女優もいるし、消防士、また、被爆者や子供を殺された母親もいる。

本の作者のターケルという人は、父親と兄二人を心臓の病で亡くし、自身も狭心症で苦しみながら96歳まで生きた人であり、「死」をテーマにした本を書くというアイディアを30年も温めて実現した人である。

死を語る人々のインタビューはそのテーマゆえに心がむき出して、だからどの言葉もすっと入ってくる。死を恐れる人の言葉も、恐れない人の言葉も。

この中のインタビューで一つ選ぶとすれば、やはり原爆被爆者のヒデコ・タムラ・スナイダーさんのものだろうか。「被爆者は、恐ろしい死と恐ろしい生を耐えねばならなかった。そんなことは、もう二度とあってはいけないのです」。シカゴでソーシャルワーカーになることで、彼女自身は少しずつ救われたのだが、それでも故郷のイメージは死とともにあり、インタビューの最後は「命のかけがえのなさ」を呼び掛けて終わっていた。