7月の読書振り返り

朝も昼も夜も暑いため、なんだか一日一日に区切りがない気がして、月の替わり目も知らないうちに迎えてしまった気がするが8月になった。

7月の読書は9冊。なんとなく月に10冊が良いペースだなと思っているので、今月もそのあたりに落ち着いた。

この中で一冊良かったものを挙げるとすれば稲垣えみ子さんの『家事か地獄か 最後まですっくと生き抜く唯一の選択』だろうか。稲垣えみ子さんはアフロヘアで有名な元新聞記者のかたであるが、50代で会社を辞めるにあたり、住まいも家賃を下げるために古い4畳半のアパートに移り、そのためほとんど物が置けないので家電を全部手放したとのこと。その体験談を書いた本だ。

断捨離とかミニマリストという言葉でくくってしまうとただの片づけ本になってしまうのだが、実際にはちょっと違う。物をぐんと減らすことでどんな風に快適になり、どんな風に将来への不安が消えていったのか、ということにスポットが当たっている内容だ。

特に「なるほど」と思ったのは「人生の可能性を広げない」という章である。稲垣さんは「これまで可能性を追求することに気を取られていた。可能性を追求するということは、いまここにある幸せに目を向けていないことだ」というのである。

「何か買うと人生が豊かになったり便利になったりするのではないか」と思って、人は物を買うことがある。が、実際には、買っては、また、次の豊かや便利の可能性を探し始め、一向にゴールが見えない。これが人の不幸の原因の一つだとはっとする。

「便利をやめる」という章も良かった。洗濯機は人がすべき洗濯を楽にするものだという思い込みがあるが、その考えが、洗濯を「まとめてやろう」という気持ちにつながり、結果、洗濯がとても大きな作業になってしまう。家電はその「便利」さゆえに家事の単位を大きくしてしまう。

食事も「美味しいもの、美味しいもの」と追い求めず、一汁一菜をささっと作り、使って済んだものをササッと洗う。そうすれば食器洗いは5分ほどで済む家事なのに、食器洗い機を回そうと思うと「ある程度は洗う食器の数が溜まらないと電気代がもったいないな」と思ってしまい、結局は食器洗いが大きな単位の家事になってしまう。

こうした稲垣さんの経験から紡がれる言葉たちに「なるほど」と膝を打つ思いであった。

実際には家族がいたり、仕事の都合があったりして、そう簡単にはいかないにしても、たまに「今日は食器を手で洗うかなあ」とか、物を買うときに少し立ち止まってみたりすることは、なかなか人生を豊かに楽しくすることのようで、読みながらわくわくしてくるのだった。