辞めようとする時、それを引き留める出来事がある

2ヶ月に一度ほど参加している、とある経済団体について考えていた。経営者として大変信頼している人に誘われて入った会だが、最近はもう、誘ってくださったその方は別のところでお仕事をされているのでほとんど会うことはない。

会って、会食をする。夜のお付き合いもある。だが、果たして自分が今するべきことはそういう場所で社交をすることなのだろうか。

定期的に訪れるその疑問に、答えを出すのは自分しかいない。

よく、こういう経済団体に入ることのメリットを「普通なら会えないような雲の上の存在の人に会える」と言う人がいるが、会ったその先に描いている未来がないと、会っただけではしょうがないのではないか。

みたいなことをいつものようにくよくよと考えながら、その日は県北のほうで会合があるので足を運んだ。バスが遅れたため、少し会場に遅く入ったところで、円卓の席の向い側に座っている女性が、私が座ったときからずっとキラキラとした目をして私を見つめていた。生憎と、私はその人が誰だか咄嗟には分からなかったのだが、会食の途中で、「イトウ(仮名)です。イトウの妻です。お久しぶりです!」と話しかけてくださった。途端に、あっ、と思い出した。10年ちょっと前に後輩のイトウの奥さんは、3人目の子供も生まれてとても大変そうだった。イトウはなんだかんだと夜に呑みにでることも多く、私は「毎夜毎夜外で呑んでは人間関係を深めるのはコスパ悪いよ」って注意もしたりしたのだった。

あれから何年も経って、子育てに奔走していた彼女は、立派に経済界の一端を担う大人の女性になっていた。まだ30代前半で、これからどんどん活躍していくことだろう。笑顔がまぶしかった。

私が10数年前に話したことも、子育てのことなんかも全部覚えていて、「ゆかりんさんが○○って言ったこともよく覚えています」と、私よりも私に詳しいぐらいになっていた。

イトウに命ぜられて、事業拠点を拡大するべく県北のほうへ通っているそうだ。子育てはイトウと二人で交代でやっている。

見違えるようになった彼女に会って嬉しくて、会食が終わってからもいろいろとおしゃべりをして別れた。

私ぐらいの年齢になると、自分が歩いた道筋を参考にしながら、あとを歩いてくる若い人たちもだんだんと増えてくる。彼ら、彼女らは、私が何気なく語った言葉をよすがに頼りない道を進みながら成長していったりする。その人達のことまで考えないと、私は、自分の進退を決めたりということはできないのだなあと思った。もうちょっとだけ頑張ってみるかなあ。まだまだ割合としては圧倒的に女性が少ない界隈で、私がやれることがいくつかあるだろう。

こんな感じでいつも、辞めようって心に決めた時に限って、もうちょっと頑張らなきゃあというような出来事というのに遭遇したりするものだ。ブログだって、もうこんなつまんないことを書いてもなあ、などとくじけそうな時に限って誰かが「読んだよ」って声をかけてくれるよなあ。

そんなことを思いながら帰路についた。