菓子パンとちくわ

「お金なんてただの数字」、ごくたまにそう思ってみることは可能だ。特にキャッシュレスのシーンも増えた今では。

一方で「年齢なんてただの数字」という言葉もあるが、これは少し信じにくい。経年による外見の変化、体力の低下は事実として年齢を突き付けてくる。

ところで、私のテニスのお友達で73歳になる春子さん(仮名)という女性がいる。春子さんはとにかくパワフルなかたである。毎週、自分が主催する登山のサークルの仲間と一緒に登山をしているのだが、彼女の登山のグループラインには100名を超えるメンバーがいる。また、テニスも週に何度かやっているが、自分が慕うコーチがいるからと夜の8時半からのレッスンに行ったりしているし、朝練をしようということになれば朝の6時半から参加する。テニスの錦織圭選手のおっかけなので、ある時は有明コロシアムでテニス観戦をし、また今のシーズンは信州にスノーシューを楽しみに行ったりする。年末年始はアメリカにいる娘さんの元に二週間ほど行き、そこで強盗団を警官が取り押さえるシーンに立ち会ったりという武勇伝を聞かせてくれる。アメリカから帰国したら、すぐ翌々日には山登りかテニスをしているという具合だ。まだ仕事もしている。

ところで先日の日曜は山の縦走大会があり、ボランティアで参加者を募り、自身も参加していた。ところが生憎の雨ということで協賛で提供された菓子パンとちくわが120個余ったという。「へ~」とインスタで眺めて感心をしていたのだが、昨日、夜8時にテニスのレッスンを終えた私を待ち受けたように春子さんがテニススクールで声をかけてきて紙袋を渡してきた。中には数個の菓子パンとちくわが入っている。「この時間に来たらゆかりんさんに会えるかと思って」と言う。そして、他のレッスン生やテニススクールの職員さんたちに菓子パンとちくわを配っていた。

「明日からまた山旅に出かけるから」と、腐らせてしまわないようあちこちに配り歩いていたのだった。

春子さんの口から「疲れた」という言葉を聞いたことは一回もない。いつも、何かしら予定を作り、せっせとあちこちに行き、そして年齢問わない多くの友人を持っている。春子さんを見ていると「年齢なんてただの数字」であり、年齢という呪いをかけるのはいつも自分自身なんだなあと思わされる。

ところで菓子パンは地元のパン工場の協賛で提供されたことは分かったのだが、ちくわはどういう経緯で?と思って調べてみたが、なるほど、ここいらにはちくわ工場もあるんだなと知った。